シンポジウム「事業成果を高める秘訣を徹底解剖!~自立相談支援事業評価ガイドライン作成・検証事業報告会~」を開催しました。
3月20日金曜日にTKP新橋カンファレンスセンターにて「事業成果を高める秘訣を徹底解剖!~自立相談支援事業評価ガイドライン作成・検証事業報告会~」を開催いたしました。※
昨年に引き続き、今回もまた年度末にも関わらず、全国各地から約50名の行政の方、市民団体から学校法人の方など生活困窮者の自立相談支援事業や、就労準備支援事業等に直接携わっている方にお越しいただきました。
平成28年度調査で実施したアウトカム評価に加え、プロセス評価を行うために、委員会を通しての委員を中心とした評価ワークショップを行い、更に、自立相談支援事業で就労支援事業を行っている事業者へのヒアリングを実施し、事業評価(アウトカム)を高める要素の抽出を行い、効果モデル(案)を構築しました。これをもとに全国の事業所においてアンケート調査を実施し、効果的援助要素と事業成果との相関を分析し、相談者の変化(アウトカム)の関係性を検証しました。
主催者挨拶として、ユニバーサル志縁センター代表理事池田徹より昨年度平成28年度事業にて行ってきた検証の報告やユニバーサル志縁センターが果たすべき社会目的やユニバーサル就労を取り組むことの重要性、そして今回の事業の評価ガイドラインの説明などがありました。
基調講演では厚生労働省 生活困窮者自立支援室室長補佐の米丸様に「生活困窮者自立支援制度の今後の展望」というテーマで、国会に提出中の自立支援法の改正法案の概要と来年度(2018年度)の予算案についてご説明いただきました。
見直しの法案については大きく4項目、1項目が「地域共生社会の実現を見据えた包括的な相談支援の実現」(関係行政機関の窓口で自立の相談機関の利用勧奨、生活困窮支援を行う際の関係機関との連携、情報共有の仕組みづくり、生活困窮者の定義や理念の整理、就労準備支援事業と家計改善支援事業への一体的な支援、新たに都道府県事業の計画の位置付け、希望する町村の自立相談支援の窓口としての機能化のための都道府県と連携強化)、続きまして2項目は、「早期予防の視点に立った自立支援の強化」(年齢要件の撤廃の見直し、収入・所得要件の見直し)3項目は「居住支援の強化」(社会的な孤立に対する相互の支え合いの仕組みづくり)で続きまして、4項目は、「貧困の連鎖の防止」(子どもの学習支援事業、生活習慣や環境を改善)についてご説明いただきました。
子どもの学習支援につきましては子どもの生活習慣、育成環境の改善に関する助言を行くという論点や、子どもの教育や就労に関する相談に係る情報提供・助言・関係機関との連絡調整を行うというのが大きい見直し案であり、また、居住支援の強化については、訪問による見守り、また日常生活を営むのに必要な支援を行い、居住支援の役割も拡大していくということを検討していることも論説していただきました。
基調報告では、日本ファンドレイジング協会事務局長の鴨崎貴泰委員と群馬医療福祉大学 社会福祉学部 助教の新藤健太委員に「調査結果報告」をしていただきました。
鴨崎委員からは昨年度の「就労準備支援事業評価ガイドライン検証事業」のご説明をいただき、成果を出せている事業所さんがなぜ成果が出せているのかということ踏み込んで明らかにしようという取り組みがあり、事業実施形態によるのではないかという仮説を、実際の評価を基に調べてみようということを行い、その結果として、前年度見えてきた中で、実施形態としては一法人一括という、つまり一つの事業体で必須事業と任意事業、両方をやっている事業所さんが非常に成果が高そうだということが分かり、その理由もいくつか分析をしていて、一法人一括の場合、法人内でコミュニケーションが円滑であって、支援方針も一致しているので、非常にニーズに沿っており、その支援対象者の状況に沿った支援ができているので成果も出ているというような仮説が成り立ったことと、共同企業体(2 法人以上で契約を結びジョイントベンチャー(JV))型の成果が高そうだということの説明がありました。
さらに深く、この成果を出せるための事業の実施のポイントであることや、その状態を適切に評価できるモデルをさらに調査するということで、平成29年度の調査をしたことの背景の説明もありました。
事業の最終目的として、事業所において適切な支援が行われるとか、多様な働き方メニューが増え、より多くの方が就労し、相談者が就労定着して経済的に安定するする仮説の中で、今回このロジック・モデルを作成して、それぞれの実際の活動が全国の事業所さんでどのようなことが行われて、実際にどんな成果が出ているのかということを、全国の1300の自立相談支援機関さんにアンケートを送付し、それを回収させていただいて、全国の事業所さんの結果から、これらの要素、つながりが果たしてあるのかということを検証したことの説明がありました。
新藤委員からは調査の概要として、第一弾調査「全国1317カ所」の自立相談支援機関に対して回収数は706カ所(回収率は53.6%)だったこと、第二弾調査「全国40カ所」の自立相談支援機関と、その相談者200名に対して回収数は119名(59.5%)の回収率だったことの説明がありました。
作成されたロジック・モデルが今回の調査の一つの軸になっており、事業の作戦体系図で出た最終アウトカムとして「当事者が就労定着して経済的に自立する」、中間アウトカムとしては、「より多くの人が就労する」ということ、それから、「相談者の状況に合った適切な支援が行われる」というモデルの中には、「支援員個人の支援能力が向上する」、「チーム支援が行われる」、「相談者に多様なメニューによる支援提供が行える」という三つの成果があることなど、それぞれのモデルに対して多くの成果があることの説明がありました。
効果的援助要素を実施しやすい受託形態は何かということの分析については、共同企業体で就労準備支援事業があるグループが、この効果的援助要素の実施度が最も高いグループであり、一方で、就労準備事業のない受託形態の場合は効果的援助要素の実施度が低いということがこの結果であり、受託形態、特に就労準備支援事業を一緒にやるということが重要なんだという話につながる分析結果だったと思われるという見解をしていただきました。
そして、調査票、質問紙調査で把握させていただいた成果の部分とフィデリティ尺度(あるプログラムが規定したプログラムモデルの基準に準拠している程度を測定するための尺度)で把握をさせていただいた活動の部分で検証させていただき、効果的援助要素に規定したA領域からE領域の実施状況や、効果的援助要素の実施状況、フィデリティ得点が高ければ高いほど、成果も高い傾向にあることが分かったことなどの発表もありました。
パネルディスカッションでは「これからの生活困窮者自立支援制度のあり方について」と題しまして、各パネリストの方から15分ずつお話いただきました。
生活クラブ風の村 生活困窮者自立支援事業統括 川上 葉子さんからは「生活クラブ千葉グループでの生活困窮者自立支援事業の取組み~事業間連携の視点から~」と題しまして、生活困窮者自立支援事業の実施状況についてや、事業実績からみた事業間連携についてなどのご説明等いただきました。
NPOスチューデント・サポート・フェイス(以下S.S.F.)代表理事 谷口 仁史さんからは「どんな境遇の子ども・若者も見捨てない!アウトリーチ(訪問支援)と重層的な支援ネットワークを活用した多面的アプローチ~社会的孤立・排除を生まない総合支援体制の確に向けて~」というテーマで、「佐賀県及び佐賀市を中心とした協働実績:NPOスチューデント・サポート・フェイスの取組概要」や「アウトリーチの有用性と実践によって明らかとなった子ども・若者の実態」「Five Different Positions(アセスメント指標)に基づくプログラムメニューの実例」などの説明をしていただきました。
A´ワーク創造館(大阪地域職業訓練センター)就労支援室長 西岡 正次さんからは「自治体の就労支援の進め方並びに『無料職業紹介事業の活用』手引き(案)」を用いて「自治体と就労支援の変遷」や「『求人』票とは異なる『見学・体験等』シート」「自治体と無料職業紹介事業」についてなどご説明等いただきました。
参加者の皆様からは「あらためてパネラーの方の取くみを聞いて、先進的なとりくみをしていると感心させられました。困難事例に取り組むためにも、連携・開発が必要になると感じました」「各事業所で様々な課題があることが聞けたので、事業に活かしていきたい」などご感想をいただきました。
今後もみなさまと一緒に就労支援のあり方を考えていけたらと思います。全体アンケート結果はこちら
※平成29年度 厚生労働省 社会福祉推進事業「自立相談支援事業評価ガイドライン作成・検証事業」